アパレルや介護職、工場勤務といったサービス業や単純作業の仕事では、接客のストレスや体力的な負担、さらに単調な作業での疲弊のほか職場の人間関係の悩みなどつらい経験をされる方が少なくありません。また、希望どおりに休めないなど働き方における悩みも尽きません。
サービス業を中心とした仕事に従事する30〜50代の多くが、葛藤しながら働いています。
- 「このまま続けるのは厳しい」
- 「転職したいけれど、またつらい職場に当たったらどうしよう」
- 「体力も落ちてきて不安」
- 「次に選ぶ仕事で失敗したくない」
そんな中、近年セカンドキャリアとしてタクシー運転手を選ぶ方が増えています。タクシー運転手の仕事は“未経験でも挑戦しやすい”“人間関係のストレスが少ない”“自分のペースで働ける””高収入を狙うことができる”など、他業種でのつらさに悩んできた人にとって働きやすいポイントが揃っています。
この記事では、タクシー運転手の働き方・魅力・やりがいを、他業種から転職する人の視点で深く掘り下げて解説します。

古川 篤志
【日本交通横浜㈱ 統括本部長】
2006年に都内日交グループ会社ワイエム交通㈱へ乗務員として入社。現場経験を積みながら運行管理者、代表取締役を歴任し、2021年からは日本交通グループ関西の執行役員本部長として勤務。2023年より日本交通横浜㈱に異動し、現在は統括本部長として会社全体の運営と採用に力を入れています。
運行管理者(旅客)の資格を持ち、採用担当としては5年間で年間230名の採用、年間142名の面接を経験。現場と経営の両方を知る立場から、これからタクシードライバーを目指す方々に安心して入社いただける環境づくりを心がけています。
タクシー運転手はなぜ働きやすい?他業種の悩みが解消される理由

他業種で働いてきた人が抱えやすい「退職理由」は、実はタクシー運転手では起こりにくいものばかりです。
ここでは、その理由を分かりやすく整理します。
人間関係のストレス/タクシー運転手は基本“一人”の仕事
アパレルでは売り場の空気、介護ではチーム連携、工場ではライン作業の上下関係など多くの職種で人間関係の悩みは避けづらい問題です。
しかし、タクシー運転手は個人プレーの仕事であるため、お客様以外には、必要以上に気を遣う必要がほとんどなく、淡々と「自分の仕事」に集中できる点が魅力のひとつです。
また、時にはお客様とのコミュニケーションが必要ですが、他の接客業と比較すると、少ない仕事です。
解消されるストレスの例は以下の通りです。
- 職場の派閥やチーム間の摩擦
- 理不尽な指示やコミュニケーション疲れ
- 気を遣い続ける接客
- 同僚との衝突
「職場の人間関係に疲れた」という人には最適な環境です。
体力的な負担/タクシー運転手は負担の調整がしやすい
アパレルの立ち仕事や介護の身体介助、工場の反復作業など、体力の限界を理由に転職を考える人は少なくありません。しかし、タクシー運転手は運転席で座って行う仕事がメインのため、体への負担を抑えながら働くことができます。
タクシー運転手の身体的負担が軽い理由は以下が挙げられます。
- 重い荷物を運ぶことがない
- 足腰にかかる負担が少ない
- 天候に左右されず、環境が一定
- 自分のタイミングで休憩を取れる
体力の衰えを感じ始める40〜50代からタクシー運転手へ転職する人が多いのも、上記のような理由が多いです。
休みにくい働き方/隔日勤務と明け休みで休息を確保
アパレルや介護では、人手不足で休めない、シフトが急に変わって予定が立てにくいといった悩みがよくあります。
しかし、タクシー運転手の代表的な働き方である隔日勤務は、勤務時間が長い代わり翌日は丸々明け休みとなるため、月の勤務日数は12〜13日となり、連休などを作ることもできます。タクシー運転手の働き方の特徴は以下が挙げられます。
- 月間の勤務日数が少ない
- 明け休みでしっかり休める
- 平日でも休みやすい
- 家庭行事などの調整が比較的しやすい
他業種から転職すると、休息時間の多さに驚く人が多い働き方です。
隔日勤務とは1回で2日分働き、勤務後は24時間休むといった出勤日と明け休みのサイクルです。たとえば1日当たり12~16時間勤務(休憩3時間)し、翌日は(労働基準法に準ずる休息時間)、明け休みになる働き方です。
平日に休めることも多いため、市役所や銀行など平日昼間にしか行けないような施設にも行きやすくなります。もちろん公休といって隔日勤務の明け休みとは別に設けられる完全な休日もあり、連休も作りやすいです。
頑張っても評価されない/タクシー運転手は努力が給与に反映される
現場職やサービス業などに多い不満が、会社の評価制度に対する評価制度です。
例えば以下のような声が挙げられます。
- どれだけ売っても給料が上がらない
- 頑張りがなかなか評価されない
- 年功序列で先が見えない
こういった評価制度や給与体系に対する不満は、タクシー運転手なら解消できる可能性が高いです。タクシー運転手は給与の透明性が高く、また、固定給+歩合制で個人の頑張りがそのまま収入に反映されます。
- 配車アプリを活用して集客する
- 地理に慣れる
- 丁寧な接客でリピートが増える
上記のような工夫をすることで未経験者からでも高収入を狙いやすい職業の一つです。
努力が収入に還元されるため、やりがいと達成感を感じやすいのです。
他業種からの転職者が語る「タクシー運転手になってよかった!」理由
実際にアパレルや介護職などのサービス業、工場勤務など他業種から転職した人が口をそろえて言うタクシー運転手の“魅力”を紹介します。
短い接客でも“ありがとう”がもらえるやりがい
サービス業や営業職の場合、長時間の接客で疲弊するケースが多いですが、タクシーは短時間接客です。さらに、短時間の接客でもお客様から感謝されやすいのが特徴です。接客業でつらい経験をした人でも、その接客・営業経験を活かしつつ、ストレスを軽減した働き方が実現できるでしょう。
感謝される場面
- お客様の荷物を持ってあげたとき
- 丁寧な運転をしたとき
- 雨天・猛暑の日の送迎時
- おすすめのお店を紹介するなど観光案内をしたとき
「こんなにありがとうを言われる仕事だとは思わなかった」 という声が多い職種です。
自由度の高さでストレスが軽減される
タクシー運転手の仕事は自由度の高さも大きな特徴です。ドライバー個人の裁量が大きく、息苦しさがありません。
自由度の高いポイントとしては以下が挙げられます。
- 休憩は好きなタイミングでOK
- 営業エリアを自分で選べる
- 営業のペースを自分で調整できる
- 職場の人間関係のしがらみがない
タクシー運転手は会社員でありながら、自由度の高い”縛られない働き方”を求める人にぴったりの職種です。
収入が努力に比例する“透明性のある仕事”
他業種と比較すると、タクシー運転手は給料事情も少し特殊です。多くのタクシー会社では歩合制(インセンティブ制)を採用している企業が多く、”頑張れば頑張った分だけ収入が上がる”仕組みになっています。
しかし現在では、完全歩合制ではなく、AB型賃金といわれる固定給+歩合での給与形態が主流です。あまり稼げなかった月でも最低限の給料が保証されている会社であれば、未経験のドライバーでも安心です。
また以下のようなポイントを抑えることで収入アップにもつながります。
- アプリ配車を丁寧に対応する
- 需要の高い時間を把握しておく
- 丁寧な接客でリピート客を増やす
- ベテランドライバーから売上アップのコツを教えてもらう
工夫した分だけ報われるため、モチベーションを維持しやすい職業です。
30〜50代でも転職しやすく、長く働ける
また、タクシー運転手は年齢に関係なく活躍できる数少ない職種です。全産業の中でも離職率が低い傾向にあり、長く働けることも魅力の一つです。そのためセカンドキャリアとして30〜50代でタクシー運転手に転身する人も少なくありません。
30〜50代のセカンドキャリアとしてタクシー運転手が向いている理由として、以下のような理由が挙げられます。
- 座り仕事で体力負担が軽い
- 年齢を理由に不採用にならない
- 安全運転や丁寧さが武器になる
- なかには定年後も働ける企業がある
これまでの経験を活かしつつ、人間関係のストレスも軽減できて、長く勤められる仕事として人気が高いのがタクシー運転手です。
どんな職種からタクシー運転手に転職してる?活かせるスキル

タクシー運転手はさまざまな業種・職種から転職してくる人が多いです。意外な経歴を持った人も、経験を活かして活躍している人が多くいます。
では実際どんな職種からの転職者が多いのでしょうか?
接客・販売などサービス業出身者
飲食店や販売・小売業、ホテルや旅館といった宿泊施設などの接客することが多いサービス業から転職する人も少なくありません。
コミュニケーションスキルやお客様の要望に臨機応変に対応できるスキルなど、タクシー運転手にも必要な基本的能力が備わっています。
サービス業出身者が活かせるスキルは以下の通りです。
- 丁寧な接客
- 気づかい
- お客様に寄り添う姿勢
「接客は好きだけど、立ち仕事がつらい」という人が乗務員として活躍しています。
介護・福祉系出身者
介護をはじめとする福祉系の仕事をしていた方にもタクシー運転手に向いています。タクシーの利用客の中には、足腰の悪い高齢者・妊婦・怪我人など身体的負担を抱える人も多くいます。
介護施設や福祉施設、リハビリ施設などで勤務していた方なら、そういった利用者の目線で対応できるスキルがお客様から感謝されます。
介護・福祉系の出身者が活かせるスキルは以下の通りです。
- 高齢者への優しい対応
- 落ち着いたコミュニケーション
- 利用者視点で動ける力
利用者に安心感を与える接客姿勢は、タクシー運転手の仕事でも役い立ちます。
物流・工場・製造業出身者
物流や工場など製造業からタクシー運転手に転職する人も少なくありません。ライン作業や単純作業などといった繰り返しの行程の中でも正確性が求められる仕事で活躍していた人は、集中力も高く、タクシー運転手に向いています。
長時間の勤務でも丁寧な運転を心がけることができ、正確な道案内が期待できます。
物流や工場などの製造業出身者が活かせるスキルは以下の通りです。
- 安全第一の姿勢
- 正確で丁寧な作業
- 集中力の高さ
このようなスキルはタクシー運転手でも活かすことができます。慎重な運転が評価され、安全なサービスに直結するでしょう。
営業・事務職出身者
現場系の仕事に限らず、営業職の経験がある人にもタクシー運転手に向いているといえます。接客業とも共通しますが、コミュニケーション能力の高さや細かい気配りが、タクシー運転手での接客で輝きます。
営業や事務職出身の人が活かせるスキルは以下の通りです。
- コミュニケーション力
- ヒアリング力
- 状況判断の早さ
営業や事務職で培ったコミュニケーションスキルやヒアリング力はタクシー運転手の仕事においても大きな強みになります。
タクシー運転手は“スキルの転用”がしやすい仕事
さまざまな職種からの転職者が多いタクシー運転手は、スキルの転用がしやすい仕事です。コミュニケーションスキルやお客様に安心感を与える対応・姿勢、運転における丁寧な技術など、これまで培ったキャリアを無駄にせず、十分に活かせる仕事です。
前職で培った以下のようなスキルがタクシー運転手の仕事でも役立ちます。
- 誠実さ
- 丁寧さ
- 思いやり
- ルール遵守
このように、タクシー運転手がどんな職種からでも挑戦しやすい理由は「人柄」が重視される点にあります。
タクシー運転手の働き方と仕事内容は?未経験でも安心して働ける理由
タクシー運転手の仕事内容とはどんなものでしょうか?
実は、中途採用で入社したドライバー達の多くは未経験からの転職です。近年では、タクシー車両内の設備や中途採用者向けの研修体制が整備されており、「初めてだから不安」「未経験でも大丈夫?」と感じている方でも安心してスタートしやすい環境が用意されています。
下記では実際のタクシー運転手の働き方や仕事内容の魅力をご紹介します。
隔日勤務・シフト制でライフスタイルに合わせやすい
タクシー運転手の働き方の特徴は「働き方を選べる」ことです。勤務形態が多様で、自身のライフスタイルに合った働き方が選択できるのが大きな魅力のひとつです。
タクシー運転手の勤務形態の種類は主に以下の3つです。
- 隔日勤務(翌日は明け休み)
- 日勤
- シフト制(相談可能な勤務形態)
家庭事情やライフスタイルに合わせた働き方が選べるため、パートナーが育児中で家庭優先の方やセカンドキャリアとして体力的に無理なく働きたい方でも無理なく続けられます。
配車アプリ・無線配車があるから初心者でも営業しやすい
「営業するのが難しそう」という不安も配車アプリを活用すれば解決できます。現在では、多くのタクシー会社で配車サービスを提供している企業と連携しています。昔のように“流し営業”だけでなくアプリからも乗客を獲得し、収入に繫げることができます。
なお、現在のタクシーの営業には以下のようなスタイルがあります。
- 乗車アプリ(GOなど)からの依頼
- 電話配車
- 駅・施設での待機
- 流し営業(補助的)
タクシー業界未経験者でも安定してお客様を乗せられる仕組みが整っています。
車両設備とサポート体制が充実
タクシー車両に最新装備が整っている企業であれば、安心です。
多くのタクシー会社で以下のような装備が標準設置されています。
- カーナビ
- ドライブレコーダー
- バックモニター
- GPS管理
- 運行管理者のサポート
また、その土地の地理に詳しくなくても、最新装備を活用すれば安心して乗務に臨むことができます。
二種免許取得は会社負担が一般的。研修制度も安心
タクシー運転手はお客様を乗車させて運転するため、普通自動車運転免許二種の取得が必須です。しかし、タクシー会社に転職する前に二種免許を持っていなくても、多くのタクシー会社では二種免許取得のサポートが充実しており、取得にかかる費用は会社が負担する場合が一般的です。
- 二種免許取得サポート
- 地理研修
- 運転技術研修
- 接客研修
- 実務指導(同乗研修)
社内研修では、上記のような内容を受講します。入社前に研修制度や二種免許の取得サポートについて確認しておくと安心です。そのような企業であれば、ステップを踏んで成長できるため、他業種からの転職者も無理なく乗務デビューできます。
タクシー運転手への転職時によくある不安&解消方法
運転や地理が不安
「免許は持っているけど、お客様を乗せて運転するほど技術があるわけでもないし…」
「地図を読むのが苦手」
「土地勘もあまりなくて地理が不安」
こういった不安も、入社後の研修やカーナビでカバーすることができます。
- カーナビで地理の心配が減る
- 実践的な研修で運転技術も向上
- 経験者が同乗してサポート
どんな職場でもはじめはみんな心配や不安を抱えています。多くのタクシー会社では、未経験者が安心できるような研修や制度等が用意されています。それらの不安は入社後すぐに解消されるでしょう。
歩合制が不安
「一般的な企業と異なる給与体系でちゃんと稼げるのかが心配」といった声もあります。
しかし、現在のタクシー会社では、固定給を保証したAB型賃金を採用している企業がほとんどです。最低限の固定給は確保できる上、歩合で稼ぐことで年収800万円以上を目指すことも可能です。
- 未経験者向けの給与保証がある企業が多い
- 売上が安定しなくても一定収入が確保される
- 仕事に慣れる期間をしっかりサポート
最初からうまく営業できるタクシー運転手は多くありません。経験を重ねて徐々に給料アップを狙いましょう。サポートの手厚い会社を選べば、歩合制を活かして高収入を目指すことも十分可能です。
体力面が心配
「1日中運転するのも体力面で心配…」
「年間休日ってどのくらいなんだろう?」
などといった休日に関する心配も多くあります。
タクシー運転手の隔日勤務は、丸1日働いて翌日休みというサイクルの勤務形態です。1日当たりの労働時間は一般的なサラリーマンと比較すると長いものの、年間休日日数で比べると、休日の多い傾向にあります。
タクシー運転手の勤務日数・休日の特徴
- 働く日数が少ない
- 明け休みで1日丸ごと休める
- 無理なく続けられるペース
体力面での不安がネックだった人ほどメリットを感じられるでしょう。
接客が苦手
「人と話すのが苦手」
「毎回初対面の人と接するなんてできないかも…」
お客様とのコミュニケーションに不安を抱える人も少なくありません。しかし、タクシー運転手がお客様一組あたりに接する時間は、乗車時・運転中・停車後の会計時といった程度で、比較的短時間であるといえます。
またすべてのお客様が運転中に話すとも限らないため、接客業ほどのコミュニケーション能力は必要ではありません。
- 必要最低限のコミュニケーションでOK
- 会話が苦手でも気遣いがあれば大丈夫
- 長い接客ではないため負担が少ない
「接客は嫌いじゃないけど長時間はつらい」という人にとってはちょうどいい仕事です。
現役タクシー運転手の1日に密着!
タクシー運転手はどんな1日を送っているのでしょうか?
実際に現役ドライバーの1日に密着してスケジュールをご紹介します。
隔日勤務の例
- 朝:出庫、ルート確認
- 日中:アプリ配車、駅付け、ビジネス客の利用が多い
- 夕方:帰宅ラッシュ 需要
- 深夜:終電を逃したお客様の需要 帰庫
- 翌日:明け休み”
長く働く日がある一方で、まとめて休む仕組みがあるためリズムを整えやすいのが特徴です。
日勤・シフト勤務の例
- 朝出庫〜夕方帰庫
休憩は自分の判断で柔軟に取れる
タクシー運転手は休憩時間を自分で決めることができます。
- 混雑を避けて休憩
- 食事休憩を自由に調整
- 体を休めるために短い休憩も自由
個人の裁量が大きく、自分のペースで働きやすいため、ストレスの少ない働き方が可能です。
まとめ:タクシー運転手は他業種でつらかったあなたにこそ挑戦してほしい仕事!
タクシー運転手は、
「働きやすさ」「やりがい」「収入の透明性」「未経験OK」「身体的負担の少なさ」 が揃う、他業種からの転職先として非常におすすめの仕事です。アパレル・介護・工場で積み上げてきた経験や人柄も、そのまま強みになります。
タクシー運転手で理想の働き方を実現しませんか?

