訪日外国人が増え続ける今、「タクシー運転手は英語を使う場面があるのか?」気になっている方は少なくありません。結論から言えば、タクシー運転手は“英語を活かして喜んでいただける接客業”のひとつです。
特に横浜や京都など多くの観光スポットが点在している地域では外国人観光客が移動にタクシーを利用することも多く、英語を活かせる機会も多いです。
とはいえ、難しい英会話が求められるわけではありません。
実際のタクシー運転手の業務で役立つのは、短くて分かりやすい“シンプルな英語”です。たった数語の英語を添えるだけで、お客様の不安が和らぎ、コミュニケーションが驚くほどスムーズになります。
この記事では、タクシー運転手として英語がどう役立つのか、現場で実際に使われているフレーズ、そして外国人のお客様に喜ばれる気遣いまで、「これさえ押さえれば安心」という形でまとめています。

古川 篤志
【日本交通横浜㈱ 統括本部長】
2006年に都内日交グループ会社ワイエム交通㈱へ乗務員として入社。現場経験を積みながら運行管理者、代表取締役を歴任し、2021年からは日本交通グループ関西の執行役員本部長として勤務。2023年より日本交通横浜㈱に異動し、現在は統括本部長として会社全体の運営と採用に力を入れています。
運行管理者(旅客)の資格を持ち、採用担当としては5年間で年間230名の採用、年間142名の面接を経験。現場と経営の両方を知る立場から、これからタクシードライバーを目指す方々に安心して入社いただける環境づくりを心がけています。
英語は“完璧に話せなくていい”。

タクシー運転手は英語力を活かすことができる仕事です。外国人観光客が多く訪れる日本では日本語を話せない外国人のお客様のタクシー利用も多いです。英語を話せるドライバーであれば、そのようなお客様に対し、安心感を与えることができます。
もちろん話せれば話せるほど良いですが、難しいフレーズを使ったり、ネイティブのように流暢に話せなくても、よく使う簡単なフレーズを話せるだけで安心感を与えスムーズなコミュニケーションを図ることは可能です。
目的地の確認、支払い方法、所要時間の説明といった基本的なやり取りは、以下のような短い表現だけで十分成立します。
- “Where to go?”(どちらへ向かいますか?)
- “This way OK?”(この道で大丈夫ですか?)
- “Ten minutes.”(10分ほどです)
多くの外国人旅行者は「日本語が通じなかったらどうしよう」という不安を抱えています。その場で“ひと言の英語”が出せるだけで、相手の緊張がほぐれます。また、たとえ英語ができなくても、意思疎通を図る姿勢を示すことで、お客様の安心につながります。
英語を使うのはどんな時?タクシー現場でよくあるシーン
外国人のお客様を接客する際によく使うフレーズを乗車から到着までの流れに従ってまとめました。
シーンごとに簡単なフレーズを頭に入れておくとスムーズに接客することができ、ドライバー側もお客様側もより安心です。
乗車時|行き先の確認
外国人のお客様は、日本の地名を発音するのが難しいことがあります。目的地は地図などを見せていただくことで、聞き間違いによるトラブルを回避することができます。
- “Where would you like to go?”(どちらへ向かわれますか?)
- “Please show me the address.”(住所を見せてください)
- “Here?”(ここですか?)
- “This one?”(こちらですか?)
走行中|所要時間・ルート案内
外国人のお客様は旅行の方も多いため、所要時間や渋滞している場合は渋滞状況を共有すると、親切です。
- “About ten minutes.”(約10分です)
- “This way is faster.”(こちらの道のほうが早いです)
- “A little traffic.”(少し渋滞しています)
- “We’ll arrive soon.”(もうすぐ到着します)
支払い時|料金案内
支払いシーンは外国人のお客様が戸惑いやすい場面のひとつです。簡単な声かけが安心につながります。
また、近年の外国人観光客の支払い方法はクレジットカード、中国人であれば、WeChat Pay(微信支付/ウィーチャットペイ)、Alipay(支付宝 / アリペイ)などが多いです。
- “The fare is ○○ yen.”(料金は○○円です)
- “You can pay by card.”(カードでお支払いできます)
- “Cash only.”(現金のみです)
- “Thank you for riding.”(ご乗車ありがとうございました)
気遣いのひとこと
簡単なフレーズを覚えておくことで、日本人のお客様と同様の心のこもった気が利く接客をすることが可能になります。
心のこもった接客はお客様にとって心に残る大切な日本での思い出やおもてなしの一つとなるでしょう。
- “Is the temperature OK?”(寒くないですか?暑くないですか?)
- “I’ll help with your luggage.”(荷物をお手伝いします)
英語が苦手でも外国人のお客様に喜ばれる“気遣い”のコツ

英語が得意でなくても、伝え方を少し工夫するだけで、外国人のお客様とのコミュニケーションは十分成り立ちます。英語が話せなかったとしても、意思疎通を図ろうと努力する姿勢はお客様に伝わり、コミュニケーションはよりスムーズになります。
①ゆっくり・はっきり話す
話すスピードを落とすだけで、相手の聞き取りやすさが大きく変わります。日本を訪れる前に簡単な日本語のフレーズを勉強して来られているお客様も多く、簡単な日本語をゆっくり話せば伝わるお客様も多いです。
②視覚情報を積極的に使う
地図アプリや画像、ジャスチャーなど、視覚で共有できる情報は言葉が伝わらない際、大きく役立ちます。聞き間違いやコミュニケーション不足によるトラブルを防ぐことにもつながるため、目的地はスマホ画面などで一緒に確認するようにすると安心です。
また、ジェスチャーを使うことによって「伝えようとしている姿勢」がお客様に伝わり、場の緊張感やお客様からの不信感を和らげることにつながります。
③翻訳アプリをためらわず使う
言葉が出てこないとき、翻訳アプリを使用することも、言語を超えたコミュニケーションにおいて有効です。簡単なフレーズでは対応できない場面に備えて、翻訳アプリがすぐ使えるよう準備しておくと安心です
“One moment, I use translation.”(翻訳を使いますので少々お待ちください)
英語以外の活かしやすい言語
英語以外にも近年では、中国や韓国からのお客様も増えているため、中国語や韓国語も活かすことができます。また、英語に比べると少ないですが、スペイン語圏からの観光客も実は多く、スペイン語の需要も高まっています。
- 中国語
- 韓国語
- スペイン語
0から勉強するのであれば、英語・中国語がおすすめですが、タクシー運転手の仕事は趣味で勉強している好きな言語を活かすことができる職業です。
まとめ|タクシー運転手は“英語を活かせる仕事”
タクシー運転手の仕事は、英語が自然に活きる場面が多い仕事です。
もし、英語が得意でなくても、簡単な英語のフレーズや、ちょっとした気遣いや工夫を覚えておくことで海外の方からも感謝される接客ができるようになり、たくさんの「ありがとう」をいただくことができます。
あなたの心のこもった接客が、日本を訪れたお客様の大切な思い出の一つとなります。

